答えは、最初から社長の中にあった――二つの現場で見た「再出発」のドキュメント。


経営改善計画を「きっかけ」に終わらせず、

「会社が変わり始める第一歩」にするためには、型どおりの支援では足りません。

 

社長の中にある想いや勘、言葉にならない違和感。
それを言葉にし、形にし、行動に変えていくプロセスが必要です。

ここでは、策定支援から継続的に関わってきた2社での実話を紹介します。
計画書はあくまで“スタートライン”。
そのあと、何が起きて、どんな未来につながったのか――その記録です。


■ A社の事例:弱みは環境が変わると“強み”になる

 

初めてA社を訪ねたとき、空気には張り詰めたような焦燥感が漂っていました。
売上は4億円台。数字の上では、どこから見ても厳しい。
社長も「このままいけば、次はない」と直感していたようです。

ある金融機関のご担当者ものちに「この会社はダメだと思いました」と述懐されていました。

一方で、私は手ごたえを感じていました。
この会社には、まだ見えていない“芯の強さ”がある。
そして、それを活かせる追い風が、業界の構造変化として近づいてきている――と。

支援はまず、社内にあるリソースの再確認と、環境変化の整理から始まりました。
金融機関には「強みが活きる局面が来る」と確信をもって説明し、
社長には「今こそ、公の制度を戦略的に使うべき」と提案しました。

その後、道は平坦ではありませんでしたが、社長は腹をくくりました。
結果、経営は徐々に立ち直り、いまや売上は3倍の12億円。
損益計画を一度も下回ることなく、繰越損失も完済。
次は10年先を見据えた第二ステージの計画づくりに入ろうとしています。

この過程で感じたのは、強みは、磨けば武器になる。でも、その武器が活きる戦場を選ぶのは、経営の読みなのだということです。

A社長はこうおっしゃいます。「経営改善計画で経営の道しるべと金融支援を手に入れたことで、それまで資金繰りに割いていたエネルギーを攻めの営業と社内改革に振り向けることができた。これが大きかった。」


■ B社の事例:「やっぱり自分はこれをやりたかったんだ」と気づいた日

 

B社の社長と初めて面談したとき、私はその人の目の奥に、妙に熱を感じました。
数字は赤字続き。打開策は見えず、経営は苦しかったはずなのに、どこか希望を捨てていない目でした。

話を聞くと、社長はとにかく研究熱心でアイデアマン。
これまでにも多くの事業に挑戦してきた方でした。
でも、どれも一定の成果が出る前に撤退せざるを得なかった。

私はすぐには「こうすべきだ」とは言いませんでした。

「コア事業になりうるものを育てたいですね。それはどんな事業分野でしょうね。」と遠回しに言い続けました。

何度も何度も、対話を繰り返しました。
あるとき、社長の口からポツリとこぼれた言葉――

「……やっぱり、うちの原点はあの事業なんだよね。」

そのとき、ようやく舵は定まったのです。

原点回帰。それは単なる懐古ではありません。「社長、いいじゃないですか!大賛成です!」
今だからこそ、再び取り組む価値があるという確信を、社長自身の中に見出したのです。

その後、地道な改善と、外部の提携体制の構築に取り組み、いまでは黒字経営が安定しました。
競争の激しい業界の中で、自分たちなりの“勝てる場所”を見つけた結果です。


会社を変えるのは、立派な計画書ではありません。

 

言葉にならない本音を掘り起こし、「やる」と決めた人の行動が、流れを変えていきます。

私はその“火種”を一緒に見つけ、灯し続ける支援をしています。
どこかに希望の手がかりがあると感じているなら、ぜひ一度、お話を聞かせてください。